三日月の絆その5

性格重視

性格重視

キィン、カイン、ヒュ。

次々に繰り出されるナイフの残影に、双剣のルーンソードが舞踏を踏むような鮮やかさで攻撃をいなしていく。

痺れを切らしたのか『死影』は後退し、

「全ての者に棲まいし心の闇よ、死の暗黒を用いて此処に来たれ。虚ろなる影を伴侶とし、自らの半身を侵せ!」

字久に向けられた左手に影が灯されると、彼の足元から粘質性の闇色の触手が出現。膝を、腰を、と見る間に字久を覆っていく。

『死影』を見つめたまま字久は右手に持つ剣を地面に突き刺し、

「理は万物の源。故に辿り着けぬ解は一つとして無し。我命ずる理を無へと還せ!」

グラウンドに突き刺さった剣が触手と共に淡い光に包まれる。闇の触手は空間ごとあらぬ方向へと折れ曲がり、空気を満たした風船のように膨らんでいく。膨張が限界に達すると触手は音もなく粉砕され、無へと還る。

その光景を見せ付けられても、『死影』はくすくすと笑っている。月下のグラウンドで繰り広げられる、死へのワルツを楽しむかのように。

「中々強いじゃない、字久さん」

「ええ。少なくとも、貴方よりはね。『死影』さん」

いつになく挑発的な台詞を用いる字久。顔に象られているのも彼女に対する嘲り。

「ずっと、私を見張っていた訳?」

「まさか。それほど暇ではありませんよ。瑞樹さんから大体の事情を伺っただけです。最初ははっきり言って成り行きで、ですね」

「成り行きで、私にこうして付き合ってくれている訳?」

「いいえ。司影君ならば喜んで火の中、水の中まで迫りに行きますが君のような物騒な方は御免こうむります。面食いだと後輩には思われているようですが、こう見えても性格重視なのですよ、私は」