懺悔
素っ気なくいつもの調子で答える字久だが、左手はすでに法衣の中に収められている。
「じゃあ、私と一緒に熱い煉獄の舞踏を踊ってはくれないの?」
「そのまま地獄に直行しそうな踊りなので遠慮しておきます。申し訳ありませんが失楽園には君一人で行って貰いましょう」
この一言に『死影』はくすくすと、
「彼女は、『司影』は見殺しにする訳?」
残酷な言葉をもって字久の心を抉る。だが、
「ええ。昇君の救出もありますし私も死にたくはありません。残念ながら瑞樹さんに言われていた『人格統合方程式』は発見出来ませんでしたからね。司影君としても昇君を救うために殺されるのならば本望でしょう」
『死影』すら絶句する内容をさらりと言葉にする。その一瞬を字久は見逃さなかった。カッ、と眼を見開くと素早く法衣からルーンを刻んだ剣を取り出し、
「我が上げしは紅蓮の咆哮。我が見つめしは熱き刃。聖火よ、彼の者に悔恨の懺悔を!」
弾丸の如き速度で投擲。発動した魔術方程式は剣を深紅の炎へと変貌させる。その炎が五つに割れ、紅蓮の槍と化した魔術が大気を切り裂き、『死影』へと肉薄する。にも関わらず、『死影』は両手を広げて高らかに嗤っていた。
「……『赤槍』が届いていない?」
「あははは! いいわ、字久さん! 昇君やあのクソ坊主のような偽善者よりも、そういう合理主義者の方が好きよ、私は!」