解体
「祖母や父、兄がつかんだ手掛かりと、微かに感じる奴の魔力を辿り、私はこの街にやってきた。でも、一つ問題があった。明確にその魔術師の魔力を探知できなかったの」
? 何故だ? 彼女ほどの使い手なら相手の居場所程度、容易にわかりそうなものだが……
「答えは簡単。ノイズのようなものが、奴の魔力の探知を撹乱するのよ。貴方の左手に宿る、『魔封じの刻印』によって」
鎌が虚空に揮われる。
風を切った風圧が昇の顔面に伝わってくる。
「貴方の左手がどういうものなのかは、『魅惑の瞳』を私が宿していたからか、封印が施された手袋越しでもおぼろげにはわかった。可能なら、無関係の貴方を巻き込みたくは無かった。だから、今までは貴方を殺さずに奴を探っていた。
……でも、もう限界。この三日月が落ち、新月の期間に入れば、私の力は最も衰える時期に入る。そうなれば私はあの呪いによって一瞬にして赤子にまで時を遡らせ、消滅させられる。
刻印で呪いを解体しようという提案は受けられないわ。私に施されている『錬金転換』ごと解体してしまうだろうし、そうなれば、私は時の流れに押し潰されて結局は死んでしまうのだから」
紫紺の瞳を昇に向けたまま、いつになく饒舌に玲於奈は語る。
「……私は、一族の敵と、自身の命のために貴方を殺す。だから、貴方も生きるために私を殺しなさい……もっとも、この状況では、それは難しいでしょうけど」