絶対の式
どちらが優勢かは、火を見るより明らか。
「……一応、聞いておきます。やめませんか、この戦い」
にも関わらず、昇は眼を伏せたまま問う。それが決して聞き入れられる事のない言葉だとわかっていても。
玲於奈はそれに、そっと重い息をつくだけ。
それに応じるように昇も大きく、大きく息をつく。
そんな昇の様子に疑問を感じたのか、玲於奈の歩みが止まる。
その時だった。
「怒れる紅蓮の主よ、その炎を我に貸し与えたまえ。熱く貴き朱をここに示せ!」
まさに一瞬。昇が胸元で合掌すると、破れ散っていた呪符が凶暴な熱風を周囲に放ち、轟炎を巻き起こした。それはすぐさま辺りに燃え広がり、玲於奈を囲むように円状に展開する。玲於奈はこの炎を鎮火しようと『思念具現化』を試みようとしたが。
ビシビシビシビシ!
それよりも早く、床が甲高い鳴き声を発した。
ただでさえ、これまでの戦闘で痛んでいた床。さらに、先程の玲於奈の『思念具現化』により、周囲の気温は相当下げられている。床に薄く張った氷が炎で融けると共に、床が高温化したことで熱疲労を起こし、
ドシャァ!
凄まじい音をたてて、玲於奈が立つ床は崩落した。
勝機はここしかない!
完全に体勢を崩し、思考もろくにまとまらない彼女に、空中に舞い散るコンクリート片を蹴り接近。魔術によって加速した昇の体は、隙だらけの玲於奈の懐に飛び込み、『魔封じの刻印』を『錬金転換』が施された肉体に行使する。
「我に定められしは絶対の式、汝に添えられしは伽藍の理。ここに汝の敗北は……」
叫びつつ、昇は最後の一撃を加えようとする。