双剣
(……暮崎・リール・玲於奈。よろしく)
一拍の間を置いた独特の返答。
(……どうして、私をこうして昼食に誘ってくれるの?)
疑問を発するときに向ける青い瞳。
(……貴方は、優しいのね)
……笑顔……
「必定なり!」
紅の貫手が、玲於奈の心臓目掛けて奔った。
ヒュ、ザッ、ヒュン、ザフ。
ナイフが空を切る音と、土を踏み締めることで発する足音だけが夜の静寂に響いていく。月下で繰り広げられる死の舞踏はいまだに続いていた。内容は、『死影』の攻撃をどうにか字久がかわし続けている、という一方的なものではあったが。
字久が死影から距離を稼ぐように跳び退くと、
「暗き影を携えし闇の長子に告ぐ。結びを崩す魔剣の力、今ここに具現せよ!」
『死影』の左腕が闇色に包まれる。その左腕を彼女ははるか前方に位置する字久目掛けて薙ぐ。音もなく、接近する黒き力。
「くっ!」
字久は自らに放たれた昏き刃に対し、双剣を十字にかざし魔力の拡散を図る。刃を受け止めると同時にルーンソードの方程式と魔光の方程式が真っ向からぶつかり合い、衝撃にグラウンドが抉られ、足が土にめり込んでいく。
「はぁぁぁっ!」
夜の帳を裂く魔光の音響に、字久の気合いが重なった。月の光に照らされた魔力の結晶が反射し、パラパラと魔光が砕け散ると同時に双剣の刀身が一つ、宙に舞う。
次いで、字久は思わず片膝を突いた。
「よくここまでもった、という所かしらね」
悠然とした足取りで『死影』が字久に歩み寄る。字久は片膝をついたままヒビの入ったルーンソードを杖代わりに突き刺す。肩で息を整えるのがやっとのようだ。
しかし、
「……何よ、その笑いは」
不機嫌そうに『死影』が見下ろす字久は、それでも笑っていた。