宣告
無情な字久の宣告。肉体強化の魔術が解かれた『死影』が字久に接近する。恐慌をきたしたナイフの斬撃よりも早く、
「汝に憑きし偽りの者よ、偉大なる神オーディンの名のもとに告ぐ。我命じる器に彼の者を封じよ!」
グラウンド全体に刻まれたルーンが神々しい光を発する。ガクガクと痙攣する『死影』の背から黒く淀んだ影が出現すると、それは司影の体に溶け込むように薄っすらと消えていく。
地に突き刺したルーンソードを媒体に魔力を送り込むことで、『死影』の力を、司影自身に再度封じ込めたのだ。
大地に刻んだルーンの効力が失せ、輝きが失われる。握っていたナイフが彼女の手からグラウンドにこぼれ落ち、司影が字久の胸にふら、と倒れ込む。
「おっと」
ふらつく足取りでどうにか字久は司影を抱き止め、
「やれやれ……それにしても疲れました。固有結果を気付かれぬように張った上に封印のルーンも使ってしまいましたからね。四文字熟語で言うならば疲労困憊、でしょうか」
ふう、と重い声を絞り出す。
「本来なら彼女の魔力も封じられればベストなのですが……仕方ないですね。『死影』の人格を封じられただけでも良しとしましょう」
さて、と呟きつつ字久は司影を起こすのに声をかけようとするが。
急激かつ、圧倒的な魔力の高まりを感じ、背後を振り返る。
「こ、これはっ!」
校舎……否、グラウンドを含めた光洋高校全体を覆うように、方円がドーム状に赤い膜を展開していた。