満月
ぼくたちは、ふたりでくさっぱらにすわりこんでいる。
もう、どのくらいこうしているんだろう。
ずっとだまって、おつきさまをみているだけなんだ。
「お前は、どのような人間になるのだろうな?」
ぼくはびっくりしておぼうさんをみる。
どうしてぼくがびっくりしたかというと、いつもはおぼうさんはぼくから『しつもん』しないと、はなさないから。
「おぼうさんは、ぼくにどうなってほしいの?」
どこか、いつものおぼうさんとちがう。いつものおぼうさんはこんなふうにしゃべったりはしない。だから、ぼくはそんなことをいってしまったんだとおもう。
こんなかんじでいうと、おぼうさんは『それはこぞう、おまえじしんがきめることだ』って、ちょっとおこったふうにいうから。
ぼくは、あわててくちをりょうてでふさいだんだ。
でも、
「自分という存在と、他者という存在を、同等に、大切に思えるような心根優しき人間に」
おぼうさんは、おつきさまをみながらちいさなこえでそういった。
「あの無数の星々の如く、その力を最後まで燃やし尽せるような、芯の通った人間に」
おぼうさんのくちは、もうひとつのことばをいった。
「満月でなくとも良い。不完全な三日月であろうと、補い合う事で、互いにその輝きを高め合える様な人間に」