理不尽
彼女に殺されなければいけない程の事を、自分はしたと言うのか?
一体自分が何をした?
理不尽な現実に抗する術は何一つない。
次の瞬間にはこういうふうに考えることも出来ない。思考も何もない闇の真っ只中に放り込まれ、端山昇という存在は消えるのだ。
どうして! どうして!
なんで俺は、あの時ためらったんだ!
なぜ心臓に『魔封じの刻印』を叩きつけなかった!
クソッ! クソ!!
殺るならとっとと殺りやがれ!
叫びが迸りそうになった。
自分を殺す相手を網膜に写すため、眼を開ける。
…………!
唇から、薄い朱が流れていた。
首元に突き付けられていた鎌は小刻みに震え、柳眉は切り上がっている。
美貌が、苦渋に歪んでいた。
熱くどす黒いものが、一瞬で消し飛んだ。
……そうか……
彼女が、殺したくて自分を殺す訳がない。理不尽な現実に翻弄されているのは、自分だけではない。
こんな終わり方しか出来なかった事をもっとも悔んでいるのは、恐らく彼女。それを思うと……
闇の中から、玲於奈の頬に何かが落ちてきた。
「……こんな役目、回させちまって、悪い。先輩」
「……泣いて、いるの?」