三日月の絆その5

理不尽

理不尽

彼女に殺されなければいけない程の事を、自分はしたと言うのか? 

一体自分が何をした? 

理不尽な現実に抗する術は何一つない。

次の瞬間にはこういうふうに考えることも出来ない。思考も何もない闇の真っ只中に放り込まれ、端山昇という存在は消えるのだ。

どうして! どうして!

なんで俺は、あの時ためらったんだ!

なぜ心臓に『魔封じの刻印』を叩きつけなかった!

クソッ! クソ!!

殺るならとっとと殺りやがれ!

叫びが迸りそうになった。

自分を殺す相手を網膜に写すため、眼を開ける。

…………!

唇から、薄い朱が流れていた。

首元に突き付けられていた鎌は小刻みに震え、柳眉は切り上がっている。

美貌が、苦渋に歪んでいた。

熱くどす黒いものが、一瞬で消し飛んだ。

……そうか……

彼女が、殺したくて自分を殺す訳がない。理不尽な現実に翻弄されているのは、自分だけではない。

こんな終わり方しか出来なかった事をもっとも悔んでいるのは、恐らく彼女。それを思うと……

闇の中から、玲於奈の頬に何かが落ちてきた。

「……こんな役目、回させちまって、悪い。先輩」

「……泣いて、いるの?」