方程式
大気の熱さを肌に感じつつも、昇はぼそりと呟くだけ。
陰陽道の伝承に伝わる十二神将が一つ、朱雀。
瑞樹が行使する、最高の魔術。
首をもたげて気高き鳴き声を発すると、朱雀は赤き翼をはためかせる。
「逃げて!」
羽から流星のような速度で火炎が幾筋も二人に降り注ぐ。玲於奈の叫びで我にかえった昇は間一髪、窓から身を滑らせた。
標的を失った炎弾はそのまま突き進み、奥にある体育館を一瞬にして火の海へと変貌させた。その衝撃に二人はアスファルトで舗装されている玄関に吹き飛ばされる。
光洋高校を、赤き力が侵略しはじめた。
「くそっ! なんつうデタラメな……」
「後ろ!」
沈んだ体を起こそうと、膝を突きつつ立ち上がりかけた昇が聞いたのは玲於奈の警告。
魔力を感知した昇は、
「我に定めれしは絶対の式、汝に添えられしは伽藍の理。ここに汝の敗北は必定なり!」
一息で詠唱を終えると、右手を地面につきつつ腰を軸にし、反射的に左手を後方に振る。
視界を覆ったのは瀑布のような勢いで迫る炎。『刻印』の力が発動し、炎よりも赤い閃光が左手に煌く。業火に左手が接触し、『刻印』に刻まれた方程式が、炎に組み込まれた方程式を……