そういうこと
陰陽師が用いる式服を着こんだ瑞樹と、朱雀である。
「兄さん、しっかりして下さい!」
抱き起こされた昇は首を巡らせ、玲於奈の方を見やる。彼女の眼前にも、朱雀。それぞれの部位の大きさなど所々違う箇所はあるものの、どちらとも朱雀に間違いない。
どういう事だ?
この固有結界の式は、播磨の者だけが扱うもの。だがその行使者と思われた瑞樹は、今、朱雀を従えて自分を抱きかかえている。いかに彼女と言えど朱雀を二体も同時に召還できるはずがない。
つまり、玲於奈の前に立ち塞がっている朱雀は、別の行使者による召還物。
「血に流れし根源よ、地に刻まれし式と交わり、我が力を高めよ」
瑞樹が詠唱を終えると同時に、彼女は全身に燐光をまとい、
「命を司りし慈愛の女神よ、倒れし戦士に癒しの御手を」
昇を抱く手が淡い光に包まれる。
炭火のような暖かさを感じながら昇は考える。
では、あの朱雀の行使者は?
この結界を張った者は、誰だ?
「……そういう……ことかよ」