現実
銀色に輝く大鎌が信じられない風圧を伴って屈んだ頭上を通過していく。それに対し、昇は膝のバネを使って下方から切り上げるようにダガーを煌かせる。が、ヒュ、と軽い音をたてて刃は玲於奈の頭髪を切り裂くだけ。
刹那、鎌の柄が真横から叩き付けるように払われた。
「ぐっ!」
昇は上体をどうにか逸らしつつ、体にかかる重心の力に逆らわないよう下半身を上方に放り出し宙返り。右膝と左手を床に突き、昇は純白のローブをまとった玲於奈を見つめる。
「……はあ、はあ……ちっ!」
「…………」
カシャン、と鎌を構える音が静かに響く。自分の息は乱れつつあるが、玲於奈に疲労の気配はない。
……押されている……!
「……どうして、なんです?」
思わず呟いていた。
理由が、さっぱりわからない。『死影』のような、衝動に突き動かされる殺人鬼でない事はわかる。第一、そうだったら、何度殺されているかわからない。チャンスなど腐るほどあったはず。
いや、あった。間違い無く。
なのに、何故? それも今なのだ?
「……現実を見なさい。貴方は、今、私に殺されかかっているという事実だけを」