玲於奈
「奴は強かった。五百年もの時を生きた祖母の右腕を奪うほどに。
私達も皆、闘ったけど、奴には手錬の魔術師が配下に数多くいた。
でも、結局その時の戦いは物別れに終わった」
悲劇がはじまったのは八年前よ、と玲於奈は呟く。
「恐らくは奪った祖母の腕を用いた『感染呪術』……でもそれ以上の事は、どんな手段を取ったのかもわからない。わかっている事は、祖母が呪術を施されたということだけ」
五百年もの時を生きた吸血鬼に、呪術を?!
昇の表情が驚愕に染まる。
そんな事が出来る魔術師がいるのか?!
……いや、いるかもしれない……
播磨塔也、殺害犯。もし、彼の『塔也殺害方法』が呪いを用いたものではなく、その圧倒的な魔力のみで殺していたら?
……十二分に、可能、だ……
「その呪いは特殊だった。『時間退行の呪い』と私達が呼ぶその呪いは、文字通り呪われた者の時間を戻すもの。吸血鬼は年月を重ねれば重ねる程強さを増していく。肉体の強さ、意思力……全てを含めて。この呪いは明らかに対吸血鬼用に開発された呪術」
その呪いが『類感』し、彼女の祖母から父、兄。
そして、現在は玲於奈の身を蝕んでいる。
「私達は日本の各地に散り、その魔術師を追い求めた」
彼女がここにいる、という結果は、この地にその魔術師がいる、という事に他ならない。
それが、どうして自分の殺害に繋がるのだ?
理解に苦しむ昇の表情を見て取り、彼女は説明する。